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おまえもっと感謝しろ!


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去年の六月の話。
名古屋守山区の北沢ふくみさん(61)が、雨の中をバス停まで歩く途中、
後ろから来た自転車の男子高校生三人組が脇を追い抜いて行った。
その後、北沢さんは大森の交差点で彼らの追いつき一緒になった。

高校生たちは雨に濡れたまま信号が青になるのを待っている。
北沢さんは、自分一人だけが傘を差しているので心苦しく思い、
迷いつつも一番後ろの男の子に傘を差し掛けた。

「ごめんね、一人しか入れてあげられなくて」
と言って。

すると、遠慮せず「ありがとうございます」と受け入れてくれた。
若い人からすると照れくさいはずだ。その素直さが嬉しかった。

また、先頭の男の子に
「ありがとうございます。明日は土曜日で休みなので、
 洗濯できるから濡れても大丈夫です」
と言われた。

まもなく、信号が青になった。
今度は、三人がそろって
「ありがとうございます」と言い、渡り始めた。
その時だった。

先頭の男の子が振り向き、一番後ろの子に言った。
「おまえもっと感謝しろ!」と。
言われた当人は、もう一度北沢さんを振り返り
「ありがとうございます」と頭を下げ、走り去って行った。
先頭の子の冗談っぽい口調と笑顔が温かく感じられた。

「きっと、三人はよほど仲がいいのでしょう。
友達が受けた親切も、自分のことのように
受け止めることに感激しました。
電車の中で席を譲り合う時と同じように、
親切をするのも勇気がいりますが、
受け入れるのにも勇気がいるものです。
お互いの気持ちが通じ合ったような気がして、
気分のいい雨の日になりました」
と北沢さんは話す。

中日新聞掲載 2016年(平成28年)3月6日(日曜日)》