待てども待てども返ってこない告白の返事
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大事な話がある、と少し古めかしい喫茶店に呼び出して、
それでもなかなか言い出せないでいた。
ここぞという時に腹をくくれない自分がもどかしくて、情けなくて、悔しかった。
そんな時、どうでもいい身の上話ばかりを
続けてなかなか本題に入ろうとしない俺に対して痺れを切らしたのか、
彼女の口から一つの言葉が零れた。
「ねえ、大事な話って何なの?」
ずっと遠回りさせていたがどうやらここまでのようだ。
ここまでストレートに聞かれて言わないわけにいかない。
「あ、あのさ……俺…前から…ずっと…す…好きだったんだ……」
俺が頑張って捻り出したその言葉を受け止めた彼女は
目を見開いて驚いていた。それでも俺は続けた。
「ずっと…言えなくて…その…だから…
もし…良かったら…つ…付き合って…くれないかな…?」
羞恥に顔を真っ赤に染めながらもなんとか言い切ったが、
恥ずかしすぎて彼女の顔を直視できずにうつむいてしまった。
「ちょっと考えさせて」
その言葉だけを残して彼女は席を立ち逃げるように出口から姿を消した。
それから1分と経たずに彼女から一通のメールが届いた。
『来週の日曜日その喫茶店で待ってて』
たったそれだけの彼女にしては短いメールだったが、
まだ可能性がなくなった訳では無いことに多少の喜びを覚え、
意気揚々と店を出た。
あれから10年、未だに返事を聞けていない。
それどころか彼女の姿すら見れていない。
あの喫茶店から帰って何気無く眺めていたニュースに
「轢き逃げにより少女死亡」のテロップと
彼女の名前が映し出された時は、
気が動転して部屋中を散らかしまくった記憶がある。
あの日、彼女を呼び出さなければ…。
彼のタイミングで告白なんてしなければ…。
帰ろうとした彼女を呼び止めていれば…。
死ぬほど後悔したが彼女は帰ってこなかった。
それから毎週日曜日に喫茶店で彼女を待っていた。
彼女が居なくなってから5年が経ち、その喫茶店も無くなった。
「……どうすんだよ…待つ場所もなくなっちまったじゃねーか………」
既に廃墟と化した元・喫茶店の前で、
出てこないコーヒーの代わりに自動販売機で買った缶コーヒーは、
ぬるくなり本来あるはずのないしょっぱさが混じっていた。